新横浜母と子の病院 スタッフブログ 2019年12月
Loading…

無痛分娩に思うこと 島田先生

Posted by 新横浜母と子の病院 on 11.2019 産婦人科医師の紹介   0 comments   0 trackback

新横浜母と子の病院 名誉院長 島田 洋一
( 元 日本医科大学 麻酔科教授 麻酔科指導医・産婦人科専門医)

 平成30年の出生数は凡そ91万人であるが、私が麻酔の「いろは」を教わり始めたのは200万人以上が生まれていた第二次ベビーブームの頃だった。 そして無痛分娩で出産される妊婦さんは極僅かで、お産の痛みは母になるための試練であった。

 無痛分娩の麻酔法も硬膜外麻酔ではなく、殆どが迷妄麻酔(強い鎮痛薬と鎮静薬を用いて起きている様な・眠っている様な状態にする)で行われていた。 麻酔科学の恩師 西邑信男教授は、我が国に硬膜外麻酔法を紹介し、一般外科手術は勿論のこと早くから産科手術における硬膜外麻酔法の有用性を多数報告されていた。 また手術の麻酔だけでなく、無痛分娩における硬膜外麻酔法の普及に大変尽力されました。 

 私は手術麻酔を教わると共に産婦人科出身のこともあり、硬膜外麻酔による無痛分娩の指導を受けました。 当時は、大学の中央手術室でさえ十分な設備がなく、麻酔状態を把握する為には自分自身の五感による情報収集(時には第六感を加え)が如何に大切であるか、また麻酔には大きな麻酔や小さな麻酔と言う区別はないと云うことを毎日叩き込まれた。 生体情報モニターが進歩した現在であっても、手術麻酔の維持管理の基本は「自分で見て聞いて触れて」であり、硬膜外麻酔無痛分娩であってもそれに変わりはありません。

 欧米の普及率には到底及ばないが、無痛分娩の認知度も少しずつ高まり硬膜外無痛分娩は徐々に増えている。 しかし近年重篤な事例が相次ぎ、厚生労働省の研究班は平成30年「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」を行い診療体制に関して、個々の妊産婦の状況に応じた適切な対応をとることや安全な無痛分娩を提供するために必要な診療体制を確保するよう努めることを求めた。 
更に体制に関して無痛分娩を熟知した専門職( [産婦人科専門医] [麻酔科専門医] [麻酔科標榜医]のいずれか)の配置と最新知見を得るための講習会の受講や危機対応のシミュレーションの実施、また救急用医薬品や蘇生機器の完備等を求めた。

 確かに研究班が提言したことは、安全な無痛分娩を行うために必要不可欠なことです。 しかし、どんなに安全対策の薬品や機器を揃えマニュアルを作成しても、担当する医師が硬膜外無痛分娩も手術麻酔と同じであると認識しなければ、絵に描いた餅と同じである。

 手術麻酔では人命に係わる事故は数万人に一人とされるのに、何故硬膜外無痛分娩では事故が続いているのか? 事故の詳細は未だ発表されないが、垣間見えるのは無痛分娩を手術麻酔とは違う小さな麻酔と捉え、麻酔管理の基本を疎かにしたことが原因のように思われる。

 恩師と先輩から「麻酔に大小はない」「自分自身で見て聞いて触れて」を、毎日頭を小突かれながら教わった。 そして重大な結果を避けるための安全教育において、パワハラと指導あるいは愛の鞭との境はどこにあるのか? 大変難しい。 言葉だけの指導であれば私は覚えただろうか? 頭を小突かれながら忘れるなと教わったことは、今でも私の安全に麻酔を行うための基本となっている。



  

プロフィール

新横浜母と子の病院

Author:新横浜母と子の病院
当院は「安心・安全・快適な病院」を目指しています。
産科ではLDR分娩、無痛分娩に力を入れています。

新横浜母と子の病院ホームページ



WEB外来予約 @Link



Instagram

検索フォーム

QRコード

QR